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AIに奈良の情報を「書かせない」という決断 — NARA NEXT開発ログ③

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こんにちは、かつコードです。

NARA NEXTの開発では、AIをかなり広く使っています。コードを書くのはもちろん、観光スポットや店舗の情報収集にも活用しています。ただし、そこには最初から明確な原則がありました。「AIに奈良の情報をゼロから生成させない」という原則です。

AIは「検証済みの候補から選ぶ」役割に限定する

結論:AI導入の原則として、「一からプランを生成させる」のではなく「人の目で検証済みの情報から、条件に合うものを選ばせる」役割に限定しています。

なぜここまで厳格にするのか

生成AIは、存在しない情報(誤った営業時間、実在しない店など)を、悪意なく、しかも自信満々に作ってしまうことがあります。これは技術的な制約というより、そもそも生成AIの仕組み上避けにくい性質です。NARA NEXTの差別化は「信頼できる情報源であること」なので、ここが崩れると事業の前提そのものが崩れてしまいます。

同伴者・時間・興味を組み合わせたルート提案も、AIに「それっぽいルートを作らせる」のではなく、全てルールベースのタグ絞り込みで実現しています。難易度タグ・所要時間・同伴者タグ(一人/カップル/小さい子供連れ/中高生連れ/シニア/グループ)をあらかじめ人が設定し、そこから条件に合うものを機械的に絞り込む方式です。将来AIを導入する場合も、この「選ばせる」役割の限定は変えない方針です。

Spot(観光地)とShop(店舗)で、検証の仕組みを変えた

結論:観光地の情報はAIが直接調査・検証して書き、店舗の情報は「AIが候補を集める→自分が確認する→管理画面で公開する」という3段階に分けています。

観光地:2ソース以上のクロスチェックを徹底する

寺社や史跡といった観光スポットの情報は、Web検索で候補を探し、複数の情報源を突き合わせてから初めて書く、という手順を徹底しています。実際の開発では、こんな判断が何度も発生しました。

  • ある寺院の拝観料について、情報源によって500円と800円という異なる数字が出てきたときは、断定せずに「訪問前に確認してください」という注記を残す
  • 火災で損傷し修復中の建物は、代わりとなる見どころが十分に確認できなければ、無理に紹介記事を作らず見送る
  • 「○年○月に大仏殿が一時閉鎖予定」という、今後起こる実際の変化についても、事前に調べて記事に反映する

これらは全て「分からないことを、分かったふりで書かない」という一点に集約されます。

店舗:営業時間はAIが独自に検証しない

観光地と違い、店舗の営業時間・価格・食事対応といった情報は、AIが独立して裏を取ることをしません。理由は単純で、個人店の営業時間はWeb上の情報が古くなっていることが多く、AIの検索だけでは「今も正しいか」を保証できないためです。

代わりに、次のような3段階の運用にしています。

  1. AIが候補となる店舗をWeb検索でリストアップし、住所・沿革など裏付けが取れる事実だけを添えて提案する
  2. 提案内容を運営者自身が確認し、必要な情報(自分が知っている現地の実情など)を補う
  3. 管理画面上では「公開待ち(pending)」の状態で登録され、運営者が内容を確認してから初めて「公開(published)」に切り替える

この「公開待ち」という状態を挟むことで、AIが集めた情報がノーチェックのまま外部に出ることはありません。

情報源にも優先順位を付けている

結論:一次情報(公式サイト)→ 旅行メディア → 実利用者の声、という優先順位を決め、特にフランス語圏の情報は「翻訳」ではなく現地発信のメディアも参照するようにしています。

情報源の階層は次のように整理しています。

  1. 一次情報(寺社公式サイト、奈良市・奈良県公式観光サイト)
  2. 旅行メディア(なら旅ネット、japan-guide.comなど)
  3. 実利用者の声(Google Mapsの英語・フランス語レビュー)
  4. フランス語ネイティブ発信のメディア

4番目が少し特徴的かもしれません。これは日本語記事の翻訳ではなく、フランス人旅行者が実際にどんな切り口で奈良に興味を持つのかを把握するための情報源です。営業時間・価格帯といった事実項目は2ソース以上でクロスチェックし、特に閉店時刻のような変わりやすい情報は、公式SNSやGoogle Mapsの直近の投稿で二重に確認するようにしています。

なお、公開前に全件を現地で確認することはしていません。閲覧数・クリック数の上位2割程度を目安に、公開後に事後的な実地確認をする運用です。全部を完璧にしてから出すのではなく、優先度の高いところから確実性を上げていく、という考え方です。

まとめ

NARA NEXTにとってAIは、情報を「生み出す」道具ではなく、検証済みの情報を「効率よく整理・提示する」道具です。観光地情報は複数ソースでのクロスチェックを徹底し、店舗情報はAIの提案→人の確認→公開待ちという段階を挟む。この線引きがあるからこそ、AIを積極的に使いながらも「信頼できる情報源」という立ち位置を守れていると感じています。

次回は、開発の途中で気づいた「画像管理の設計」の話——Mediaモデルという裏側の仕組みについてお伝えします。

今日からできる3つのアクション

  • 自分の業務でAIに任せている作業のうち、「検証済みの情報から選ばせる」形にできる部分と「AIに生成させている」部分を切り分けてみる
  • コンテンツを公開する前に「確認待ち」のステータスを挟む仕組みがあるか、自分の業務フローを見直してみる
  • 情報源の優先順位(一次情報→メディア→ユーザーの声)を、自分の業務に当てはめて言語化してみる

このシリーズの他の回もあわせてご覧ください(着想編、技術選定編、Media設計編、収益化編、コンテンツ拡充編、まとめ編)。


実際に使ってみる → NARA NEXT