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「奈良公園で止まる旅行者」に気づいた日 — NARA NEXT開発ログ①

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こんにちは、かつコードです。

新しいサービスは、たいてい「こうすれば儲かるのでは」という思いつきから始まりません。今回リリースした「NARA NEXT」も、最初の一文は投資計画でも技術検討でもなく、こんな漠然とした問いかけでした。

今、奈良は外国からの観光客が増えたことがとても人気があり、ビジネス的にもチャンスがあると思います。ただ、ITはというと外部からの敵が多いと思います。どのようなビジネスが良いと思いますか?

この記事から、全7回でNARA NEXTの開発の裏側をお伝えしていきます。初回は、着想からコンセプトが固まるまでの経緯です。

最初のアイデアは「奈良のメディア」だった

結論:最初に出てきたのは「奈良を紹介するメディアを作り、広告や有料記事で収益化する」という、よくある構想でした。しかし、この形はすぐに手放すことになります。

ありがちな構造の限界

奈良観光メディア → アクセスを集める → 広告・アフィリエイト・有料記事、という流れは、実現できたとしても大きな収益にはなりにくく、何より「信頼できる情報源でありたい」という方向性と相性が良くありませんでした。有料記事にしても、旅行者からすれば「500円払って読む」より「Googleで無料で調べる」を選ぶ可能性のほうが高いはずです。

発想の転換:お金を払うのは旅行者ではない

壁打ちの中で出てきた転換点は、「外国人を受け入れる奈良の事業者」を顧客にするという発想でした。

  • 旅行者には無料でガイド・ルート・マップを提供する
  • 対価を払うのは、外国人客との接点を求める奈良の店舗・事業者側
  • メディアは「情報発信」ではなく「営業装置」として機能する

この時点で、奈良市の外国人訪問者数(2024年時点で約297.7万人)や、奈良県の外国人延べ宿泊者数(2025年10〜12月で前年比22.7%増)といった数字も確認し、「外国人向け奈良」という市場自体は確実に存在することを裏付けました。

Google Mapsにもインスタグラムにもない隙間

結論:最終的な突破口になったのは、「奈良公園から先の移動」というGoogle Mapsも解決していない具体的な隙間を見つけたことでした。

「奈良公園で止まる」という共通パターン

奈良を訪れる外国人旅行者の行動には、かなり分かりやすいパターンがあります。

奈良公園 → 鹿 → 東大寺 → 大仏

ここまでは非常に強い動線です。ところが、その先に「じゃあ次はどこへ行けばいい?」という壁が現れます。法隆寺、薬師寺、明日香村——行き先の候補は知っていても、「どうやって行くのか」「どのくらい難しいのか」が分からず、多くの旅行者はそこで足を止めてしまいます。

Google Mapsは「経路」は教えてくれるが「行こうと思わせる」ことはできない

Google Mapsは「東大寺から法隆寺までどう行くか」は正確に教えてくれます。しかし、「奈良公園にいる外国人旅行者が、法隆寺まで行ってみようと思えるようにする」ところまではカバーしていません。Instagramも「明日香村って素敵!」という気持ちは作れますが、「今、奈良公園にいる。じゃあ実際に明日香村に行ってみよう」という行動には直結しません。

この「思わせる」と「教える」の間にある隙間こそ、NARA NEXTが埋めるべき場所だと気づきました。

「場所」ではなく「ルート」を売る

普通の観光サイトは、法隆寺・薬師寺・明日香村という「場所」を紹介します。NARA NEXTでは、奈良公園からそこへ「どうやって行くか」を主役にします。さらに、ルートには難易度(EASY / MEDIUM / ADVENTURE)というタグを付けました。

  • 🟢 EASY:奈良公園 → 東大寺 → 春日大社(徒歩中心)
  • 🟡 MEDIUM:奈良 → 西ノ京 → 薬師寺(電車を使う)
  • 🔴 ADVENTURE:奈良 → 明日香村(電車+バス+徒歩)

「明日香村は難しそうだからやめよう」ではなく、「ADVENTUREか、ちょっと挑戦してみよう」と思ってもらう。これは単なる観光情報ではなく、旅行者の心理的なハードルを下げる仕組みです。

生まれたコンセプトと名前

結論:「奈良公園を否定せず、その先へ連れていく」という思想から、”Beyond the Great Buddha.”というコンセプトと「NARA NEXT」という名前が生まれました。

奈良公園・鹿・大仏という入口は、否定するべきものではありません。むしろそこを起点に、その先へ進んでもらう。この考え方から生まれたタグラインが、

Beyond the Great Buddha. / 奈良公園の、その先へ。

です。名前も、当初案の「NARA LOCAL」から、この思想をそのまま体現する「NARA NEXT」に落ち着きました。

そして何より重要だったのは、最初のKPIを「売上」に置かないという決断です。外国人ユーザー数、ルート閲覧数、「次の場所」のクリック数、そして何より「奈良公園以外へ何%の人が移動したか」——これを見ていくことにしました。単なるアクセス数より、地域にとってずっと意味のある指標です。

まとめ

NARA NEXTは、「奈良のメディアを作って広告で稼ぐ」という発想から始まり、「奈良公園から先へ移動する隙間を埋める、お店側に価値を返すサービス」という形にたどり着きました。Google Mapsが解決しない「行こうと思わせる」部分と、Instagramが解決しない「実際にどう行くか」の部分、その両方を「ルート」という単位でつなぐのが、NARA NEXTの核になっています。

次回は、このコンセプトを実現するために、なぜLaravel・React・PWAという技術構成を選んだのかをお伝えします。

今日からできる3つのアクション

  • 自分の事業やサービスが「解決していない隙間」を、既存の大手サービス(Google・Instagramなど)と比べて言語化してみる
  • 「場所」を売るのではなく「体験の順番(ルート)」を売れないか、自分の業種に置き換えて考えてみる
  • KPIを「売上」以外に1つ設定してみる(NARA NEXTでいう「奈良公園以外への移動率」にあたるもの)

このシリーズの他の回もあわせてご覧ください(技術選定編、コンテンツ信頼性編、Media設計編、収益化編、コンテンツ拡充編、まとめ編)。


実際に使ってみる → NARA NEXT